Column 家づくりコラム

家族が暮らしやすい二世帯住宅の作り方

 二世帯住宅は「家族の関係性」を設計する家

 

二世帯住宅は単なる住まいではなく、家族のあり方を形にする建築です。
設計事務所として私たちは、間取りを考える前に「どんな距離感で暮らしたいか」「どんな助け合い方をしたいか」を丁寧に伺います。
それぞれの家族がどのような時間を過ごし、どんな関係を築きたいのか、その価値観が空間構成を決定づけます。

 

“完全分離”か“緩やかなつながり”かをデザインする

設計における最初の分岐点は、「共有」と「独立」のバランスをどう取るかです。

  • 完全分離型では、構造的にも音や振動を抑えるため、上下階の床構造を厚くする・水回りの位置をずらすなどの工夫が必要です。
  • 部分共有型では、玄関やテラス、中庭など“顔を合わせる場”として設計し、偶発的なコミュニケーションが生まれるようにします。
  • 完全同居型の場合も、収納や照明計画を丁寧に練ることで、世代の違う生活リズムが自然と調和します。

建築的には、構造と意匠の両面からプライバシーと交流の「緩衝地帯」をつくることが理想です。

 

 動線計画でストレスを減らす

二世帯住宅の課題の多くは、実は「動線」に起因します。
たとえば、洗濯動線・買い物動線・来客動線が交錯すると、日常の小さなストレスが積み重なります。

設計の段階で以下のような点を重視します。

  • 玄関から各世帯への動線を自然に分ける
  • 来客スペースとプライベートゾーンを明確に分離
  • 親世帯が1階中心の場合は、車椅子や介護を想定した幅を確保
  • 子世帯は水回りを効率的にまとめ、生活のリズムを保ちやすく

「会いたいときに会える距離感」「気を遣わずに動ける設計」が、快適さを生みます。

 

将来の変化を見据えた“可変性”のある構造

 

設計事務所として意識するのは、「今」ではなく「20年後」も快適であること
家族構成の変化に合わせて使い方を変えられるよう、次のような工夫を提案します。

  • 壁を抜いて一体化できるような構造設計
  • 将来は賃貸やSOHOとしても使えるような独立動線
  • 配管・配線をフレキシブルに配置してリフォームを容易に

建物の耐用年数だけでなく、暮らしの耐用年数を延ばす設計こそ、二世帯住宅の真価です。

 

家族会議と設計ミーティングの重要性

実際の設計プロセスでは、家族全員を交えたヒアリングが欠かせません。
親世帯と子世帯で希望が異なることは多く、間取りを決める前に「どんな暮らし方を望むか」を言語化することが大切です。
私たちは、模型や3Dパースを使いながら、視覚的に理解できる形で提案を行い、家族全員が納得して進められるようサポートします。

 

素材とデザインで「共通の心地よさ」を

世代の違いを超えて心地よく暮らすためには、デザインにも工夫が必要です。
親世帯の落ち着きと子世帯のモダンさを融合させるために、

  • 自然素材(木・石・漆喰など)を基調にして温かみを持たせる
  • 色味や照明で空間のトーンを統一する
  • 各世帯の好みを尊重しつつも、共用部分では共通のデザイン言語を採用

こうした「デザインの一体感」が、家族の心理的な一体感にもつながります。

 

 

設計事務所ができること

二世帯住宅の設計は、単に間取りを描くだけではありません。
家族の関係性・将来の暮らし方・敷地条件・法規制など、複雑な要素を整理して最適解を導き出す「調整役」であることが、設計事務所の大きな役割です。

「同じ屋根の下に暮らす」という家族の願いを、図面と空間で実現する伴走者として、最初の相談から完成後の暮らしまで寄り添います。

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